「es エス」映画情報
製作年:2001年
製作国:ドイツ
上映時間:119分
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あらすじ
元新聞記者のタクシー運転手タレクは、ある心理実験に被験者として参加することに。その内容は、被験者を看守役と囚人役に振り分け、模擬刑務所内でそれぞれの役割を演じながら生活するというもので、タレクは囚人役を割り当てられる。実験は和やかな雰囲気でスタートするが、些細な諍いから看守側と囚人側が対立。さらに実験が進むうち、看守役の人々は支配的・攻撃的な振る舞いをエスカレートさせていく。最初は反抗していた囚人役の人々も次第に抵抗できなくなり、実験は思わぬ方向へと展開していく。
予告
映画データ
原題 | Das Experiment |
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監督 | オリバー・ヒルシュビーゲル |
製作 | マルク・コンラート ノルベルト・プレウス |
主なキャスト | モーリッツ・ブライブトロイ クリスチャン・ベルケル |
受賞歴 | ・モントリオール国際映画祭最優秀監督賞 ・ドイツ映画賞最優秀観客賞等4部門 ・ババリアン映画賞3部門 他 |
「es エス」感想レビュー
今回は、実際に起きた監獄実験を題材にした映画を紹介します。2週間を予定した実験はわずか7日目で中止になったその真実を描きます。
作品について
1971年に実際にあったアメリカのスタンフォード大学心理学部で、監獄実験を題材にした映画です。実験の内容は、模擬刑務所で、看守と囚人に別れ演じるというだけのもの。実験期間は2週間の予定だったのだが、わずか7日間で実験中止とされたいわくつきな実験となっています。
その理由は、初めはそれぞれの役を演じるだけの簡単なアルバイトと誰もが考えていたのですが、実験が進むうち「看守役」の攻撃的な振る舞いはどんどんエスカレートしていき。それに対し「囚人役」は卑屈に服従するのみで、まったく抗議すらもできない状況になり、模擬刑務所内は単なる実験の枠組みを越えて、もはや誰にも制御不能の状態となってしまったといったものです。
では、そのいわくがついた実験では何が起きたのか!?を描いた映画となります。数々の映画賞受賞した傑作ともいえ、後に『エクスペリメト』と『プリズン・エクスペリメント』の題名でアメリカで逆輸入ともいえるリメイクが2度もされている映画となります。(断然、ドイツ版のオリジナルの方が面白いです!)
実験のルール
実験には6つのルールがありますので、そのルールを紹介。
1.囚人はお互いに番号で呼び合う
2.囚人は看守に対して敬語
3.囚人は消灯後、会話をいっさいしてはならない
4.囚人は食事を残してはいけない
5.囚人は看守のすべての指示に従わなければならない
6.ルール違反を犯した囚人には、罰が与えられる
といったような6つのルールですが、結果は余りにも危険で人間の心を簡単に破壊することができる残酷なルールとなりました。
感想
観終わった後にどっしりと重く暗く残る映画でした。単なる実験のはずが、人間はこんなにも役になりきれるものでしょうか?お金欲しさに集められた、全くの素人が“支配”と“服従”に徹し、演技の域を超えてしまった余りにも異常な光景に、観ていて心苦しさを感じました。
決められた6つのルールなのですが、たった2日で、暴動、見せしめ、暴力、体罰へと変貌させることができるルールで、人間の本性を出すには十分でした。バイト1日目の和やかな雰囲気から一転し、バイト6日目の絶望感…。その余りにも正反対状況が、実験の残酷さを物語っています。
もちろん映画だから大げさに描いているところもありますが、現実の実験で起きたことを調べてみると、案外近しい状況まで陥っているみたいです。
・囚人に向けて消火器を発射し全員を裸に
・暴動を主導した人物への重い仕打ち
・態度の悪い者への体罰(腕立て伏せなど)
・監視カメラから見えないようにしての虐待
・真っ暗な独房を使っての罰
・素手でトイレ掃除や靴磨き
現実の実験で起きてしまった状況ですが、映画で描かれている殺しや研究者の監禁以外は割と忠実に書いているんですよね…。
支配と洗脳というものの怖さが良く分かる映画(実験)ではないでしょうか。人間の闇の欲、そして本能なのかもしれません。万が一、自分が看守の立場になった場合はいったいどんな行動を起こすのだろう…はたして自我を保っていられるのだろうかと、考えさせられることが多い映画でした。
犯罪やいじめなどに通じる人間の恐ろしさを知ることができる怖い映画で、非常に重くるしくなる映画ではありますが、そういう心理状況を見るにはお勧めの映画でもあります。ただし、何度も観る作品ではないことは確実です。
後味悪い映画だったニャ~やっぱり一番怖いのは人間なんだニャ!
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