「友罪」の映画情報
上映日:2018年05月25日
製作国:日本
上映時間:129分
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STORY
ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり…。
TRAILER
REVIEW
ネタバレしているから気を付けてニャ~!
原作は薬丸岳の小説であり、1997年に兵庫県神戸市須磨区で発生した連続殺傷事件の酒鬼薔薇事件がモデルになっているといわれています。記憶にもあると思いますが、中学校正門に、切断された男児の頭部が放置され、マスコミに挑戦的な文章を送り付けた犯人は当時14歳の中学生であったという衝撃的な事件です。
レビュー前に言っておきますが、少年犯罪につき彼は保護され今は医療少年院を退院、そして「元少年A」の手記が出版されている。さらにはホームページ開設、有料メルマガ配信と来た。恐らく彼は相当なお金を稼ぎだしたでしょう。更生した人間が自分がやったことで商売できるのでしょうか???疑問が残るばかりです。
はい、前置きはこれまでにして映画のレビューに行きましょう。
まず、この映画(小説)は、被害者側の観点は抜け落ちている作品です。完全に犯罪者側中心に描いております。犯罪を犯した人たちや周囲の人々の苦労を描いてます。その前提で、今回の登場人物一人一人、私個人的な感想を書いていきます。
【息子が過去に無免許事故で3人の子供を殺してしまった家族】
佐藤浩市が演じるは、息子が自動車事故で人を殺めたために家族を解散したタクシー運転手の山内修司。父は息子の犯した罪の贖罪に被害者に慰謝料を支払い続け、謝罪し続ける毎日です。頭を下げるこの父の様子は何かに取り付かれているのではないかと思える程の異常な様。
そんな中、息子が結婚と子供を授かる。父は息子に言った、「人様の子供の命を奪ったお前が自分の子供を授かるのか」と。息子の妻は言った「加害者は幸せになる権利はないの?」父は一言だけ言った「無い」と。非常に重い一言です。
なんだか、さだまさしの曲の「償い」思い出しました。ただ、曲は加害者本人が自分の生活も未来も捨て被害者に償い続けある時に被害者の母から赦されるという曲です。映画では「償い」を全て父に頼り切っているだけ。慰謝料も謝罪もすべて父だけ行っているです。
息子は父と絶縁しました。それはまさに罪を自分で負うのではなく、父に罪を背負わせ自分は幸せを手に入れようとした瞬間と私は理解しました。
【娘が未成年で妊娠してしまった、少年更生施設の女性先生】
富田靖子演じるは、罪を犯した化け物と呼ばれる少年A達の更生に人生をかけ、自らの家族が崩壊してしまった更生施設先生の白石弥生。犯罪者たちを更生する仕事は必ず必要。でもそれは世間からはどう思われる仕事だろうか、まして母親から放置された娘の気持ちはなおさらでしょう。
この映画で1つだけ救いがあったとしたら、娘の妊娠で白石が母親として目覚めた瞬間でしょうか、ようやく母と子供に戻ったのです。
と共に・・・更生している少年たちは今後どうなってしまうのでしょうか。白石は母親に戻ることで少年たちを見捨てる判断をしたことになるのではないでしょうか。
【少年Aに恋をした、男に騙されAVに強引に出演させられた女性】
夏帆演じるは、田舎から出て、何もかにもがうまくいかず、悪い男に騙された女性の藤沢美代子。実家に帰っても周囲にAVビデオをバラまかれ友人にもそして彼氏となった少年Aの住まいにも…。まさに卑劣な行為の被害者なのです。救いのない状況の彼女を救ったのは、少年Aの鈴木でした。二人の恋は急速に進みます。
鈴木が異常殺人者少年Aと知るまでは…。
彼女の最後の判断は映画では読み取れませんでしたが、おそらく鈴木を見放していると読み解けます。安心できる場所から再度地獄に突き落とされた彼女は、今後もしかしたらもう立ち直れることができない状況まで落ちてしまうのではないか?と思えます。
異常殺人者でも私は愛を貫く!などという甘いセリフは聞かれないのです。
【子供の頃、いじめっ子の自殺を止めれなかった元記者】
生田斗真演じる、少年Aと友人関係になっていく元記者の青年役の益田純一。自分が同じようにいじめられるのを避けるため、唯一の友人として付き合っていたのに、いじめられっこに最後にとどめを言葉を発してしまった、益田の罪の意識は計り知れないもの。
ただ、彼はまだ少年だったんです。これはしょうがなかったのではないでしょうか。いじめられっこも自殺以外の方法があったはずなんです。逆に、罪の意識を一生持って生きていかないといけない益田が一番の被害者であるのです。いじめられっこの母が死ぬまで、付き合ってきた益田はとても立派であったと思います。
友人となった少年Aを世間に公開してしまったきっかけを作った彼は、ラストで今まで行けなかった自殺現場へ向かい、号泣するシーンはとても印象的でした。
益田は少年Aとは違うんです。一生分の後悔もした、もうこれで赦されて幸せになってもいいじゃないかと、私はそういう気持ちになりました。
【少年時代に2人を殺害した、少年A】
さて、冒頭で述べた酒鬼薔薇事件の犯人を描いたであろう(正式に原作者は認めてはいない)といわれる、瑛太演じる鈴木秀人。殺人後に死体をみてマスターベーションにふけるという異常的な犯罪なのである。
社会に出た鈴木も変わらず異常な雰囲気と行動なのですが、この映画では彼も人間なんだと言わんばかりに、自分が死ぬと悲しむといってくれた益田との友情が芽生え、新たな恋もしてしまった。鈴木は、仲間と共にカラオケをし事件以来初めて笑い楽しい時間を過ごしたのだ。そして鈴木は被害者には申し訳ないと言いつつも、生きたいと叫ぶのである。
ラストでは、殺害現場を訪れ、不気味な笑い泣きを行う。このシーンで、彼が本当に更生し被害者に申し訳ないと思ったとは思えません。自分が普通にそして幸せに生きていけない悔しさへの涙としか、見えませんでした。
はい。ということで登場人物への感想を書いてみましたが、本作が問題作となるゆえんは、犯罪者(少年犯罪)は幸せになってはいけないのか?というメッセージです。私はそれはダメと答えさせて頂きたい。何を甘いことを言っているのだと。人間は忘れていく動物があるゆえに、加害者は罪の意識を忘れてしまうのは確実です。それでは被害者とその家族の気持ちがあまりにもむなしいではないか。
最近の悲惨な交通事故、異常な子供への虐待殺人、そして無差別殺人。起こしてしまったものはしょうがないではなく、起こしたら最後である。死んだ人は戻ってこないように、加害者の幸せは無いのです。この作品は特に少年犯罪という国の少年法という問題に切り込んでいるため余計に問題作なのです。
少年法に守られ、何ともないように社会に復帰している犯罪者達。酒鬼薔薇事件の犯人もそう、少し話が変わってしまいますが私は一番腹が立つのは女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人がのうのうと社会で暮らしていることです。この事件知らない方はWikiでその残虐性を調べていただければと思いますが、異常な殺人犯が社会に溶け込み皆さんの隣にいるかもなのです。
と、映画とは関係ない話題まで触れたレビューになりましたが、これが映画の素晴らしいところです。受け取るメッセージ性により、映画を超えて色々な思いや考えが生まれてくることですね。ちなみに本作は、全く被害者側を語らずして犯罪者を美化している気がするので、全く好きになれませでんした。
なんだか嫌な気持ちになっただニャ!!!
INFORMATION
題名 | 友罪 |
製作年 | 2018 |
監督 | 瀬々敬久 |
原作 | 薬丸岳 |
出演者 | 生田斗真 瑛太 佐藤浩市 夏帆 山本美月 富田靖子 |
配給 | ギャガ |
受賞歴 | - |
リンク | 公式サイト |