「異端の鳥」映画情報
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※時期により鑑賞できない場合あり。
あらすじ
東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である1人暮らしの叔母が病死して行き場を失い、たった1人で旅に出ることに。行く先々で彼を異物とみなす人間たちからひどい仕打ちを受けながらも、なんとか生き延びようと必死でもがき続けるが…。
出典:映画.com
予告編
作品データ
原題 | The Painted Bird |
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製作年 | 2019年 |
製作国 | チェコ・スロバキア・ウクライナ |
上映時間 | 169分 |
監督 | バーツラフ・マルホウル |
原作 | イェジー・コシンスキ |
脚本 | バーツラフ・マルホウル |
メインキャスト | ペトル・コラール ウド・キア ステラン・スカルスガルド ハーベイ・カイテル バリー・ペッパー |
受賞歴 | ・カンヌ国際映画祭クシシュトフ・キェシロフスキ賞、脚本賞 ・ヴェネツィア国際映画祭ユニセフ賞 ・チェコ・ライオン賞8部門受賞 他多数 |
「異端の鳥」映画解説
数々の映画賞を受賞した映画なんだニャ!
作品解説
ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した同名小説を原作に、チェコ出身のバーツラフ・マルホウル監督が11年の歳月をかけて映像化した映画です。ヴェネツィア国際映画祭で退場者が出る中も、最後には10分間のスタンディングオベーションが捧げられたといいます。
第2次大戦中の東ヨーロッパで、ひとりの少年が荒涼とした田舎を彷徨い幾度どなく差別や暴力にあいながらも、家に帰る旅を続け、後半では戦争のシーンも何度も出てくる衝撃的な作品となっています。
169分という長丁場ですが、少年に起こる1つ1つの異なった出来事がいくつも展開され、映像は全編美しいモノクロ映像となります。
原作者イェジー・コシンスキ
原作者イェジー・コシンスキの事を紹介しておきましょう。コジンスキは、本人も第二次世界大戦中にナチスの迫害を受けた経験を持っています。1957年に西側へ亡命したコジンスキは、ニューヨークへ渡り、英語で執筆した本映画の原作である『ペインテッド・バード』が世界的ベストセラーとなりました。
コシンスキは映画界との関係があり、『レッズ』には俳優として出演した経歴もあります。さらには、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のモチーフにもなったシャロン・テート殺害事件の夜、現場のロマン・ポランスキー宅に招かれていたが、行かなかったというエピソードもあるという。(ただし、真相は謎のようです)
1991年、57歳の時に自宅の浴槽でビニール袋をかぶって自殺をとげるという、壮絶な最後としても有名です。
「異端の鳥」感想・レビュー
なかなかしんどい映画でした。賛否の嵐と言う本作ですが、鑑賞してみて納得です。人によっては見るに堪えないシーンが満載ですが、これが人間なんだという人間の本質をえぐってきます。目を覆いたくなるシーンが多く映像はモノクロなのに風景が映ると美しい。音楽なし主役の少年のセリフもほぼ無し。そして極めつけは169分という長丁場ですから、鑑賞者に映しだされる本作への心境も様々となるでしょう。
そして一番の辛い理由は、その差別や迫害を受けるのがすべて1人の無垢であっただろう少年なのです。本映画の紹介で必ず使われている、少年が地面に埋められ首だけ出して、カラスが狙ているという画像ですが、インパクトが強いのですが、そのシーンはなんとほぼ前半で出てきます。そこから、永遠と不条理な暴力や強姦まで経験させられるという。
出典:映画.com
少年が様々な辛い経験を経て、変わっていく心理や行動をみているのは、本当に辛いものがあります。少年はいったい何を信じればいいのでしょうか…。印象的であったのは、父と出会い家に帰る少年は、冒頭であんなに望んでいたことなのに喜ぶことすらしないのです。
本作で描くは一貫して異質なものに対する差別でした。容姿や肌の色の違いで標的にされるのです。「異端の鳥」という映画タイトルも、映画の1シーンでも登場する、鳥売りの男が、一羽の小鳥にペンキを塗って空に放つと異なる見かけのために他の鳥たちから攻撃され、無残な姿で殺されるというシーンから来ているようです。
う~ん、今現在ではアジア系人種に対するヘイトクライムなんかもニュースで取りだたされていますが、昔も今も変わらないですよね。おそらく異質の物への差別は、どんなに平和や平等を叫んでも、無くなることはないのでしょう…。
この映画で驚いたのは主演の子役の ペトル・コラールです。驚異の新人と言われてるように、全くの新人であったから驚きです。こんな辛くて重い役を見事に演じ切っています。
出典:映画.com
そして、何気に脇を飾る俳優陣も豪勢なんですよね。数々の映画を演じてきた、名優 ウド・キアやステラン・スカルスガルドやハーベイ・カイテルといった、主役級といってよい俳優達が、登場します。(他も書き切れないくらいな有名な俳優さんが!)鑑賞していて、えっ!凄い役で登場しているね!って思える程で、何気に、本作お金かけていると分かった瞬間でもありました。
出典:映画.com
そしてもっと驚いたことは、まったく無名の監督による映画だということです。無名の監督が、11年の歳月をかけて、無名の幼い少年を主演として豪華な俳優を短い時間で出演させて、問題作と呼ばれつつも最終的には数多くの映画賞を受賞したという快挙なんですよね。いや~。これからも監督がどういう映画を作ってくれるんだろうと、否が応でも今後も期待させてくれます。
というように、何かと話題の本作ですが、鑑賞される方は心して観ないといけません。私も何度も途中で観るのやめようかと思いながらも、なんとか最後まで見切りましたから。お勧めとは言えないですが、1度は観る価値はある映画だとは思います。ただし、決して、2回目は観る予定はないですがね…。
人間はなんて愚かで怖いんだろうかニャ!
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